こんにちは、id:hc0001 です。今日は会社が掲げるミッションとプロダクトとして目指すところ、そしてそこに向かうためにどういった課題を抱えているのかといった話をします。
ハウテレビジョンのプロダクト
ハウテレビジョンはキャリアプラットフォームである外資就活ドットコムと Liiga、そして知の交流プラットフォーム Mond を展開しています。外資就活ドットコムは 2010 年にはじまった、外資系・日系を含む一流企業を目指す学生向けの就職活動サイトで、Liiga は若手をハイキャリアを目指す若手向けの、厳選された求人を掲載する転職活動サイトです。
どんな企業のどういった求人があり、どういう募集要項と選考フローで、どのように応募してどう内定を貰えばいいのか。就職や転職における一連のプロセスを自ら調べて対策するのは大変な労力を伴います。外資就活ドットコムはそうした就職活動における情報の非対称性を解消するために誕生しており、その時の「就職や転職に際して発生する、労働動機や能力を見つめ直すプロセスが能力開花するために重要なものである」という弊社代表の原体験が「全人類の能力を全面開花させ、世界を変える。」というコーポレートミッションに繋がっています。このように、キャリア形成において重要な意味を持つ「就職」と「転職」を通じて、志ある人の自己実現を支援します。
Mond は「問い」という根源的な欲求を通じて、世界の可能性を広げることを目指すプラットフォームです。問の重要性は先の自分を見つめ直すプロセスで言及した通りで、就職や転職といった特定のライフイベントに焦点を当てるのではなく、人類の能力開花の源泉とも言える「問答」を通じて、社会の変革を促すことを目指しています。私自身も認定回答者として日々 Mond 上で生まれる問に対して、問答しています。
私自身の労働動機も時々に応じて変化してきました。生きていく上で必要な稼ぎを得るという前提はありつつも、エンジニアリングバックグラウンドが全くない状態で SIer に就職するところから始まっています。受託開発と技術投資が相反するベクトルということを悟り、より技術者として大成するための環境を探す中で、新規事業の大量立ち上げを掲げてエンジニアを募集していたサイバーエージェントに転職しました。事業会社で働く中でソフトウェアエンジニアリングという専門性を磨きながらも組織や事業に思考が変化してきた中で、当時のキャッシュレス勃興期の最中、すでに C2C マーケットプレイスとして成功を収めていたメルカリが決済事業に乗り込んでいくということで、日本の価値交換のあり方を変えていくミッションの一助になるためにメルカリにジョインします。その後は、様々な業務を様々なレイヤで関わる中で、日本社会のボトルネックは何なのかを自問する日々が続きました(ちなみにこれは仕事で直接的に求められてきたわけではありませんが、同僚との対話の影響です)。
当然、こうした壮大なテーマの答えが簡単に出る訳もありませんが、いくつか感じていた課題のひとつに「雇用」がありました。ここ 30 年間、日本経済は停滞が続いていますが、その要因にあらゆる組織に存在する既得権益があり、必要な新陳代謝を妨げています。企業の営みにおいては、就職した会社に終身で勤め上げる慣習や正社員の雇用保護などがそれに当たるでしょう。戦後の教育制度もこれらの文化的背景に強く影響していますが、昨今では転職や副業が一般化してきたことで転換期を迎えています。「ひとりひとりが働くテーマを持ち、適した環境で能力を発揮する。優秀な人材を抱えるために企業は新陳代謝を繰り返し、より優れた事業を社会に創出する。」こうした体質転換が、これからの日本社会に必要なことではないかと感じています。
優秀な人材を採用し抱え続けるために、企業側の組織改善を促しつつ、人材の新陳代謝を促すためにも、雇用される側の機動性を高める必要がある。100% がそうではないにせよ、年功序列を助長しかねない新卒一括採用等の枠組みや終身雇用は転換期を迎えているのだろうな。
— Shogo SENSUI 🍵 (@1000ch) 2021年10月9日
プロダクトおよび組織の課題
このように個人的なテーマと組織や事業として目指すところの交差が決め手となり、ジョインしました。事業としては順調に成長拡大し、新たな事業の種も芽が出ている一方で、エンジニアリングを含む組織やモノづくりの在り方には発展の余地を残しており、今後更なる速度で成長できるポテンシャルを感じています。今後も労働市場におけるキャリアの動向を捉えながら、ミッションの達成に向けて邁進していくことは前提ですが、短期でフォーカスするべきいくつかの重点課題を設定しています。
組織の共通言語となるプロダクトロードマップおよび運用プロセス
現状の組織図は、ビジネス本部・プロダクト本部・コーポレート本部・Mond 事業部・人材戦略部という大きく 5 つから構成されており、ビジネス本部とプロダクト本部がキャリア事業の推進を主幹とし、Mond 事業部がその名の通り Mond を育てています。ビジネス本部にはプロダクトの価値を営業活動を通じて提供する事業開発部と広報活動を通じて届けるマーケティング部があり、プロダクト本部は大きく分類してプロダクトマネジメント、エンジニアリング、デザイン、編集の専門性を持った人材と部付の HRBP で構成されています。
中長期の目標は存在していましたが、部門がそれぞれの目標を設定していたため、専門性の垣根を超えて事業に向き合うための目標や共通言語が曖昧でした。これを払拭するために、その事業の未来を描くプロダクトロードマップを創り、レビューを通じて経営として合意した状態にすることで、ロードマップに対して各専門性がどのようにコミットできるのかを思考していくように、現在進行系で構造を転換しています。これによって、プロダクトロードマップが部門を超えた共通の羅針盤の役割を果たし、ビジョンに対して組織が部門を超えて一体となって向き合うことを目指しています。
当然ながら事業を取り巻く環境は、考慮しきれないほど多くの要因に左右されるため、定期的にアップデートしていく必要があります。だからこそ、ひとりひとりが専門性の壁を超えて事業に向き合いコラボレーションしていくことが求められます1。
外資就活ドットコムで顕在化する技術負債の根本的解消
創業以来、会社の成長を支え続けてきた外資就活ドットコムですが、システム面へ十分に投資してこれなかったこともあり、大きな技術負債を抱えています。また、十数年の間に発生してきた人の入れ替わりに伴って肥大化したシステムの全容を把握している人がおらず、目下の開発生産性だけでなく問題発生時への対処が難しく、システムの管理体制として不確実性が高い状況です。中でも、PHP の古いバージョンやアップデートされていないフレームワークなどは、可及的速やかに対応すべき事項です。
技術負債は、収益として大きな割合を占める外資就活ドットコムだからこそ喫緊の課題であり、解消に向けて集中的に投資することを経営として意思決定しました。これを完遂することで、開発生産性とシステム可用性を確保しこの先の数年を戦えるシステムに転換するとともに、この技術的な投資実績は今後の経営判断の糧になるでしょう。この進捗はまたの機会に発信していければと思います。
エンジニアリングの核となるプロダクトを横断した技術戦略
外資就活ドットコムでは PHP, Go, React, Next.js, TypeScript, AngularJS、Liiga では Ruby on Rails, Vue.js, Nuxt、Mond では React, TypeScript, Node.js といったように、それぞれが独立した開発体制や技術選定で進められています。こうした分化は、担当メンバーの得意な技術で取り組めるメリットがある一方で、チームで蓄積したナレッジを再活用し難く組織学習を進めにくいという弊害があります。結果として中長期での開発生産性や人材流動性などを確保できなくなるため、戦略的に統制を図っていく必要があります。
前述の技術負債の解消後も、Liiga や Mond の実装に使われている技術との差異が残ります。Mond については事業フェーズが若いこともありソフトウェアとしての負債は限定的と捉えますが最新バージョンにアップデートされていない Vue.js/Nuxt と Ruby on Rails の抱える Liiga は既に実施対象です。Liiga は中途事業として大きく加速を目論むフェーズであり、技術負債の規模としても外資就活ドットコムほど大きくないため、Liiga のプロダクトロードマップのアイテムとのバランスを加味した上で、システム課題としてプロダクトロードマップに含めています。Vue.js/Nuxt のバージョンアップデートだけでなく、Frontend 技術の何をどこまで揃えていくのか、Backend 実装を Go 言語にしていくのか、そしてプロダクトを問わずシステムの冗長化をどのように図っていくのかを整理・議論しています。プログラム言語ごとの Lint ルール、テストや CI/CD の戦略、開発スタイルなどの改善も、システムの潜在的なリスクヘッジと開発生産性のボトムアップに向けて PDCA をはじめました。
技術スタックや開発プロセスの統合だけでなく、各プロダクトのシステムに共通化するべき部分を統合することで、資源の投資効率を高める必要もあります。キャリアプラットフォームに分類される外資就活ドットコムと Liiga については特に、アカウントや認証の基盤を統合することで、新卒・中途という分類ではなくジョブ型雇用への転換をシステム面から推進することに繋がるでしょう。ただし、実行に向けては、外資就活ドットコムの技術的負債を解消しシステムの全容を明らかにした上での検討が必要になるため、現時点での具体的な計画には落としていません。
課題を踏まえた今後について
非連続な成長を遂げていくには上記の重点課題のみならず、それ以外や今後新たに発生する課題にも対処し、ひとりひとりだけでなく組織として進化していくことが必要不可欠です。ビジョンを見据えたプロダクトの勝ち筋、実現する組織の構造や仕組み・リーダーシップ、それらに欠かせないメンバーの活躍と成長など、向き合うべきことはたくさんありますが、着実に歩みをはじめています。これを加速させるには、志を同じくする仲間が必要です。既存事業が生み出すシナジーや今後の組織展望に興味がある方は、プロダクトやエンジニアリングのポジションのみならず、ビジネスのポジションを含めて様々なポジションがオープンしていますので、是非カジュアルにお話しましょう。